2015年04月23日
第25回「DJ イオインタビュー」
posted by DJイオ at 08:25| 第1回〜第25回
2013年06月06日
2012年09月23日
2012年05月10日
2010年12月29日
2010年11月29日
2010年11月12日
2010年10月26日
2010年09月27日
2010年09月12日
2010年08月26日
2010年07月23日
2010年07月10日
2010年03月12日
第6回「Sukiyaki / Sandii」
Sukiyaki
イッツ・パーティ・タイム。DJイオだ。私は数年前にこの「Sukiyaki / Sandii」を購入し、いい曲だなーと思いつつDJではプレイせずに放置していた。それは何故か。曲のBPMが自分がプレイするには大変に遅く、私はその頃ハウス・ミュージックを主にプレイするDJであったため、なかなか機会に恵まれなかったのだ。だがしかし、ご存知、坂本九「上を向いて歩こう」に挟み込まれるラップ、スクラッチ、骨太なビート。文句無しに良いリミックスだ。
Sukiyaki(remix) / SANDii
無知な青年時代
そしてお恥ずかしながら私はこのレコードをいい曲だなーと思いつつ放置していたため、作者のSandiiについて全く無知であった。たまたま外人が「上を向いて歩こう」をHIPHOP調にカバー/リミックスした曲であろうと思っていた。
だが今回このはぐれDJ道を書くにあたって調べなおした所、Sandiiはハワイ育ち、日本人とスペイン人とのハーフであり、本名は「鈴木あや」という大変に有名な歌手である事が判明した。
そしてレコードの裏をよく見ると「東芝EMI株式会社」というこれも大変に有名なレコード会社がリリースしている事が判明した。
買ったレコードをロクに調べもしない無知なDJとしてこのワールド・ワイド・ウェブをお借りして読者諸君にお詫び申し上げたい。さも以前から知っているように記述する事もできたのだが、今回は反省の為正直に書く事にした。我ながら尊敬しても良い。
だってジャケットが外人みたいで、曲名もわざわざ「SUKIYAKI」ってなってるんだもん…。英語みたいなアーティスト名なんだもん…皆様も英語のようなハンドル名、アーティスト名を好き放題につけ、無知な一介のDJを翻弄させる事はくれぐれも避けて頂きたい。
45回転でかけてみよう!
さて以前、このコーナーで「YUMIKO」というシングルを取り上げた事を覚えているだろうか。「YUMIKO」は45回転であるレコードを33回転であると10年間間違えていたのだが、今回はそういう事はなかった。
しかしアナログDJがよくやるお遊びとして「わざと回転数を間違えてプレイしてみる」というものがある。私はそれを行い家で一人ニヤニヤしていた。
以下が45回転でプレイしたレコードである。回転数を変えるとビッグビートっぽくなり、ヒップホップDJ以外にも使えるビートに!皆様は聞き比べていかが思われるであろうか?
Sukiyaki(remix) / SANDii(45RPM)
Ikan Kekek
このレコードはSandiiのアルバム「Mercy」から「SUKIYAKI」「Ikan Kekek」をアナログカットし、リミックス、editを加えて収録したものである。SUKIYAKIのHIPHOPリミックス以外にも、「Ikan Kekek」という曲をハウスリミックスにしたトラックも収録されている。
「Ikan Kekek」は主にマレー半島〜インドネシアに伝わる童謡で、魚の名前を意味するタイトルである。
しかしこのアナログのリリースは1990年。当時のいわゆるレイヴブームに乗った派手すぎるトラックは童謡の雰囲気をいい意味でも悪い意味でもブチ壊し、ジェームスブラウンネタのイントロに始まり、ジュリアナテクノで有名な「huga chaka」も途中に挿入されるやりたい放題のやんちゃなトラックに仕上がっている。
私はいたく気に入っているのだが、時と場所を選ばないといささかプレイしづらいので中々クラブでのプレイには至らないが今度リクエストがあったら積極的にプレイしていきたいと思う。
Ikan kekek(Remix) / SANDii
Sandiiについて
Sandiiについて更に調べた所、現在は自分のルーツであるフラ(フラダンスのフラ)に戻り、Jazztronikと共作も行い、今年2010年には春風(野外パーティ)にも出演予定である。
90年のアルバム「Mercy」もアジアンチックな雰囲気に包まれており、実に素晴らしいので興味があったら聴いて頂きたい。91年にはmajor forceも参加しているリミックスアルバム(タイトル:come again)もリリースされている。そして調べているうちにすっかりSandiiのファンになったのでこれから音源をビート・ゴーズ・オン。
jazztronikとの競演映像
Sandii.Info
*アルバムの詳細については「不条理音盤委員会」の記事を参考にしました。ありがとうございます。不条理音盤委員会 不条理音盤委員会 566 Sandii 「Mercy」
posted by DJイオ at 00:00| 第1回〜第25回
2010年02月27日
第5回「サイタマノラッパー オリジナルサウンドトラック / SHO-GUNG」
映画大好き
イッツ・パーティ・タイム。私、DJイオは映画が大好きだ。去年は2本もの映画を観に行った(ヱヴァンゲリヲンとカールじいさん)。中でも私が好きなのは「観る音楽」だ。
要するに音楽、特にダンスミュージックを題材にした映画を好んで観ている。
「WILD STYLE」「SCRATCH」「MAESTRO」「8 Mile」etc..etc...
ブロンクスの空気を切り取り、ハウス誕生前夜のインタビューを聞き、Q-BERTはスクラッチで宇宙と交信できる事を語り、エミネムは車工場で勤務中にこっそりセックスをする。
そんな私が今年初めて観に行ったのが「SRサイタマノラッパー」だ。
詳細はハイパー・リンクをクリックし、オフィシャルサイトを参照して頂きたい。
がそれすらも億劫な方の為に簡単に説明しよう。
SRサイタマノラッパー
北関東のど真ん中、レコード屋もライブハウスもないサイタマ県の田舎町(劇中ではフクヤ)
ヒップホップグループ「SHO-GUNG」の仲間たちはいつの日かライブをすることを夢見ている。
が現実では、主人公のIKKUは仕事がなく家族から邪魔者扱いされている「ニートラッパー」。
親友のトムはおっぱいパブでバイトが忙しい「おっぱいパブラッパー」。
後輩のマイティは実家のブロッコリー畑で働く「ブロッコリーラッパー」。
そんな彼らは伝説のトラックメーカー「病弱なタケダ先輩」や地元の先輩たちの力を借りて、自分たちの曲を作りライブをやろうとする。
そんなある日、高校の同級生の千夏(みひろ)が東京から帰ってきて偶然、IKKUはスーパーで再会してしまう。
千夏は高校を中退して東京でAV女優として活躍し、また地元に帰ってきたのだった。
些細なすれ違いから、千夏のことを巡って次第にラッパーたちの夢がバラバラになっていく…。
サイタマ県の片田舎で不器用にラッパーを目指す青年たちの、どこか哀しく、やがて可笑しな日々。
(オフィシャルサイトから引用した文章を元にしました)
SRサイタマのラッパーのテーマ
私は鑑賞後サウンドトラックを購入し、役者の方々(IKKU役駒木根氏、TKD先輩役上鈴木氏)にサインを頂き帰路についた。そしてこのCDを耳にしそこで初めて涙した。
「SHO-GUNG」×「 SRサイタマノラッパー」 PVフルver.
ダンスミュージックは未だ日本ではマイノリティだ。学校や会社でも周りに聴いている人間は少ない。周りの人間に説明しても理解してもらえない。
「何その服?」「ヒップホップ?あれでしょ?ヨーチェケラッチョってやつ?」「DJ?あのこうキュッキュッ?て奴?」「テクノ?…パフュームとか?」「ハウス…?って何?テクノとどう違うの?」「歌がない」「なんであんな歌い方なの」
「何時だと思ってるんだ!うるさい音楽かけて!」
(DJイオがここ10年間で大家さん、もしくは実家の親に何度か言われた言葉)
主人公IKKUも昔の同級生にバカにされ、家族には「将来の事も考えずよくわからない事やってる」と思われ、市の偉い人達の前でライブをやっても理解してもらえない。東京に行くのはなんだか怖い。ブロッコリーが名産の北関東の日常は本当に何もない。エミネムのように必死に伝えるべきメッセージもない。でもHIPHOPが好きでしょっぱい日常を何とかしたい。
このような映画なのだが本編について語ると長くなりすぎてしまうので割愛しよう。
SRサイタマノラッパーのサントラでは、映画では語られなかった部分を補完できるような形で各登場人物のトラックが入っている。読者の方々も愛聴しているであろうストリートファイター2のサントラをイメージして頂ければ近いかもしれない。
店頭販売、通信販売のほか、KINGBEATでデータ販売もされているので以下視聴、もしくは購入して読んで頂けると幸いだ。
KINGBEAT - SHO-GUNG : サイタマノラッパー オリジナルサウンドトラック
「DJ TKD 辞世のラップ」
何曲か例にあげてこのサントラの楽しさを伝えていきたい。上記リンクの12曲目では「DJ TKD 辞世のラップ」が視聴できる。
劇中では「TKD先輩」という凄いトラックメーカ−が病気で地元に帰ってきた事しか明かされない。
彼はどてら姿で青白い顔、半分寝てるような表情で玄関先までにしか顔を出さない。
「あ…」「曲…」「いつまで…?」
やる気があるんだかないんだかわからないTKD先輩は遺作をSHO-GUNGに託し急逝してしまう。
以下、歌詞の一部から抜粋して引用する。
ここはどこだ サイタマはFUKUYA たった四畳半 湿った布団の上から
俺ことTKD だらだらと死ぬ間際 言葉 垂れ流すわ
体の弱い俺はトラックメイカー 明日が怖いがまぁ仕方無ぇか
1979から刻んだ年月 齢29歳に救済はなく
こんにちは俺の筋ジストロフィー 叩くMPCがトロフィー
奇跡はなくただ神経煮詰まる 辞世のラップ残し人生終わる
-----------
期待に添えない 時代に乗れない もう何も見えない
頭煮つまり もう馬の耳に念仏ならぬ豚の耳にトンコツでできた僕が
世界の中心からズレたところでHIPHOPを叫ぼう
MUSICシーン外れても断るGIVE UPと絶望
劇中ではほぼギャグとしてしか扱われない先輩だが、コンピを聴くと彼がどういった日常を過ごし、何が好きでどんな思いを抱えていた人間かがわかる。
咳こみながらも辞世のライムを書き、家から出られず犬の鳴き声しか外からは聞こえない。ジュラシック5やデラソウルに思いを馳せ、闘病しながらトラックを作るしかない。
このサントラで一番好きな曲だ。
李君のラップthe13億
また、劇中で端役として登場する、李君という中国人がいる。
MIGHTYのブロッコリー畑を手伝っている彼はほんの一瞬しか登場しないのだが、そんな李君のトラックもサントラに入っている。
ニーメンハオ!こんにちは 僕の名前はリーです
日本でブロッコリー作ってます 中国から来た留学生です
test test マイクのテスト North,South僕らのもんです
飲んだら乗らない自転車に 13億自然に増えてます
半ライス大盛りで ナイスな踊りはノリノリで
小っちゃな頃から丸刈りで 十五で苦労を覚えたよ
ラーメンマンとモンゴルマン 本当は同じラーメンマン
みんな同じ人間です 世界の中心 中国です
曲中に入っているMCも日本人が偏見で抱く中国人感丸出しで非常におもしろい。李君はヨーヨーマが好きらしい。
埼玉生まれブロ畑育ち 山の幸とは大体友達
アルバム全体を通して様々な部分にユーモア、パロディ、妙なリアル感、ふと心に刺さるライムが散りばめられている。近年データ購入が増えて歌詞カードをじっくり見ながら曲を聴く回数が如実に減っているのだが、久々に歌詞を読みながら楽しめる曲の数々だった。
「観る映画」のサウンドトラックも発売されている事があるが、映画のバックトラックをただ羅列しただけで、本編、サントラどちらも素晴らしいものは少ない。
がこのサントラは普段ヒップホップもハウスもテクノも全く聴かない読者の諸君にも自信を持ってお勧めできる。聴くと映画をまた見たくなり、映画を見るとまた聴きたくなる。まだ映画を観てない方にも是非聴いて想像を膨らませて頂きたい。
「SRサイタマノラッパー」は現在2つの映画賞を受賞し「ライムスター宇多丸のシネマランキング2009」でもベスト1位。現在「SRサイタマノラッパー2」も撮影を終えており公開予定だ。今後の公開予定についてはオフィシャルサイトを都度参考にして欲しい。
はぐれDJ道第一回で紹介したレオパルドン政所氏もオフィシャルのアンサーソングを製作し、youtubeで公開している。
サイタマノラッパー「俺らSHO-GUNG」ファンキーコタMIX
またSPEEDKING RADIOに映画主演の駒木根隆介氏が出演、様々なエピソードも聴けるのでこちらも合わせて聞くとおもしろい事うけあいだ。
SPEEDKING PRODUCTIONS 【Blog and Podcasting】:BUBBLE-B・政所のSPEEDKING RADIO Vol.72 ゲスト:駒木根隆介 (SR サイタマノラッパー 主演)
その他、YOUTUBEに各キャラクターとしてのオフィシャルインタビューも動画が上がっているのでこちらも合わせて観ると楽しんで頂けると思う。
また関係ないのだが私もSHO-GUNG同様、エミネムを目指し活動をしている人間の端くれとして、上記KINGBEATでトラックが購入できる。私が世界にグンググーンするためにも読者の方々に購入して頂きたい。ビート・ゴーズ・オン。
posted by DJイオ at 00:00| 第1回〜第25回
2010年02月12日
第4回「I Want You Back (TEAM BANZAI Remix) / Jackson 5」
サイバーパトロール
イッツ・パーティ・タイム。私、DJイオは現在ワールド・ワイド・ウェブパトロール官として世界中を飛び回り、DJとして良質な音楽を探し、紹介する事を生業としている。
雨の日も風の日も、嵐の日もだ。
数々のマウスクリック・ウォリアー、キーボード・クラーッシャー達とサバイバル・ダンスを繰り広げ私は生き残ってきた。
スタート、ストープ、リピート、サンプリング、ブレーカー・オフ。
そこに音楽があれば、私は耳を傾ける。モアミューック、モアライフ。
探せ!サンクラ!
ところで最近soundcloud(以下サンクラ)というサービスがあるのを読者の方々はご存知だろうか?
myspaceのDJ版、とでもいうべきSNSサービスだ。ユーザーは自分のトラック、djmixを気軽にアップロードし、波形に直接コメントをつけられる。
ユーザーは容量制限では無く、合計何分まで、という制限で音楽をアップロードできる(例えば無料ユーザーは120分まで)ため、mp3に限らずwavファイルなどの高音質なファイルもアップロード可能だ。
ウィジェットとしてblogに貼り付つける事も可能で、トラックメイカーが配布していればDJの用途としても耐えうる高音質な音源を探す事ができる。
例:イオのアカウント

イオのアカウント
アーティスト、レーベル、または友人にデモを送るための「dropbox」という機能もあり、簡単にデモを送る事もできる。
このような次世代のサイトで何かおもしろいのがありそうだなーと思って私は音楽とかを探していた。そんな折、見つけたのが以下の「TEAM BANZAI」だ。
TEAM BANZAI

TEAM BANZAI
チーム・バンザイ。愉快な名前である。チームで万歳。
プロフィールによるとアメリカのオレゴン州で活動しているユニットだ。
私はこのユニットのI Want You Backのリミックスに惚れた。
I Want You Back (TEAM BANZAI Remix) by TEAM BANZAI
昨年のマイケルジャクソンの訃報後、数々のリミックスが巷に溢れたが粗悪なものが多かった。その中でも数少ない、実に愛が溢れている(ような気がする)骨太なエレクトロ・ファンクなリミックスだ。
更にサンクラでTEAM BANZAI情報を探していた私は、パワーレンジャー(*注1)のリミックスを発見した。
原作に対する情熱が高まるあまり、おそらく勝手に作ってしまったであろうリミックスだ。
「こいつらには何か感じるぞ…!」
そして更に調査を進め、facebookでライブ動画を発見した。
Facebook | Andrew Shartleさんが投稿した動画:「TEAM BANZAI @ ATO 1.29.10 [HD]」
ライブというかクラブの客を写した動画で、結構下品なライティングの下で女に腰をすり寄せ続ける男がいささか気になるが、アメリカの小箱(多分)でそれなりに盛り上がるTEAM BANZAIを聴いて私はますますファンになった。いいじゃないか。TEAM BANZAI。
2月4日にアップされていたdjmix
TB E-Mix by TEAM BANZAI
本人達の説明によるとElectro/Funk/House/Chip-Hop、と言われるジャンルが好きなようで、レトロ風味なトラック以外でも最近流行っている方のElectroなリミックスがあるので、興味がある方は是非聴いて頂きたい。
一部の曲はダウンロードできないが、2010年2月8日現在、32曲、3本のdjsetのうち大体の曲がダウンロードできるようになっている。
活動はいつ頃からなのか、名前の由来は等不明な所が多いが今後注目していきたいユニットである。
サンクラはmyspaceと同じくダウンロード数がわかるため、有名曲かまだ誰にも聴いていない曲かがすぐわかってしまう。TEAM BANZAIは私がアクセスした時点では殆ど聴かれていない曲も多かったので、これからダフトパンク並にTEAM BANZAIがヒットしたら私が日本で最初に紹介したのだと自慢していく所存だ。
さて、これより私はさらなるサンクラ情報の渦へとアクセスして来ようと思う。
未来には何があるかわからないのだから。ビート・ゴーズ・オン。
soundcloud team banazai
facebook team banzai
myspace team banzai
(*注1)パワーレンジャー:スーパー戦隊シリーズを日本国外向けにした特撮テレビドラマシリーズ)
posted by DJイオ at 00:00| 第1回〜第25回
2010年01月27日
第3回「Here I am / Hammer Bros」
全ては「高橋名人」から始まった
1997年当時、私は全日本ファミプロ協会という協会に所属していた。
ファミコンのプロとして当時まだ一般的ではなかったクソゲーの攻略、
攻略法の執筆を生業としていた。15年早かったゲームセンターCXである。
「高橋名人」に関する情報の捜索も当然業務の一環だった。

全日本ファミプロ協会の攻略本「ファミ魂レザ」1997年発売
「高橋名人」に関するありとあらゆる情報を集めていた折、ある一枚のコンピレーションCDを発見した。
「The Last Of The Mohicans / VA」一見なんの変哲も無い、
国内産として初の一般流通GABBAコンピレーションCD/アナログだ。
その中にある一曲「Here I am / Hammer Bros」を私は聞き逃さなかった。

The Last Of The Mohicans / VA
「高橋名人!」「ゲームは一日一時間」「Welcome to 冒険島」「僕らの仕事はもちろん勉強、成績上がればゲームも楽しい」「外で遊ぼう元気よく」「僕らは未来の社会人」
BPM200オーバーの暴力的すぎるビートに載せてこれらの台詞が連呼される。
賢明なる読者の諸君ならご存知だと思うが、「高橋名人の冒険島」テーマ・ソングEPのB面に収録された、「高橋名人のシンクロナイズド冒険島」からのサンプリングだ。
あっ、今のメロン、取りたかったー!!!!
「高橋名人のシンクロナイズド冒険島」についても必要の説明は無いと思うが、一応付け加えておく。
ファミコンの「高橋名人の冒険島」発売当時、攻略に難儀したファミっ子少年達の為に、「高橋名人」が自ら1-1〜1-4までの4面をプレイし、ハイテンションで攻略法の中継をしているものである。
「高橋名人」は1986年にしてニコニコ動画の出現を予言し、ゲーム実況中継の基礎を固めたのだ。
しかし映像はついていないので当時の少年達は音源を聴き、想像しながら実際にプレイしてみるしか攻略の術はなかった。
高橋名人のシンクロナイズド冒険島
狂気のフリーペーパー、裏口入学'83
さておき、「Here I am」、このトラックを作ったHammer Brosについての情報を私は追い求めた。衝撃のあまり追いかけずにはいられなかった。
シスコアルタ店の端っこの方のレコ棚を探したり、レコ屋のテクノコーナーでhardcoreという文字や、ガイコツが描いてあるレコードをくまなく買い漁ったりした。
当時GABBAシーンではいくつかのフリーペーパーが流行っており、「裏口入学'83」というHammer Brosのフリーペーパーを発見した時、私は恐怖した。
異様なテンションと歪んでいる文字。高橋名人、はだしのゲンの画像を乱雑に貼り付けたコラージュ。
もしかしてこの曲を作っている人達は完全なアウトサイダー、何か線が切れている人達なのではないか。。。

裏口入学'83
恐怖に怯えながら引き続きファミプロとして活動を続けていたある日、Hammer Brosのライブがあるという情報を得た。
1998年2月20日@新宿liquidroom「GABBER STORM」
なんと本場ロッテルダムからEUROMASTERSも来日。国内主要GABBA/HARDCOREDJも集合。
これは行ってみるしか無い。
当時ファミプロ会報に記事にしたレポートを以下に引用するので、ご覧頂きたい。
今読むとあきらかに間違っている認識もあるが、その部分も含めて読んで頂きたい。
GABBER STORMレポート
以下引用
やあこんにちわんこそば!!!突然だけど、みんな「ガバ」って知ってるかな?
おそらくファミコンとは関係ないので知らない人が殆どだと思う!
ガバってのは1992年頃オランダで発生した音楽で、ハードコアテクノとかハードコアとも呼ばれている!平均BPMが200を超えているとても速くて怖い音楽だ!
テクノとパンクの融合と思ってもらってもいいかもしれない!
日本でもガバをやっている人達がいて、その中でハンマーブロスという人達がいる!
曲の中で高橋名人やはだしのゲンをサンプリングしたり、Quickjapanのインタビューでは高橋名人と友達になることが目標だと答えている!そんなかっこよく狂っている人達だ!!
そして2月20日に新宿リキッドルームでガバのパーティがあり、ハンマーブロスがライブをやるという!これは行くしかない!!!
そして当日、僕は友人とリキッドルームに行った。
とりあえずフロアを覗くと二人組の人達がライブをやっている。
ハンマーブロスは三人組と聴いていたので、体力温存のために友人とソファーでだべる。
そしてしばらくすると突然例の「高橋名人」の曲が!!!
ダッシュでフロアに飛び込むとさっきの二人組に加えてもう一人の人が!!!
BIG THE BUDOだ!しかも着ているのはハドソンのTシャツではないか!
最初にライブをしていたのはハンマーブロスだったのだ!!!
しまったと思いつつブースの前で踊り狂う。
そしてハンマーブロスのライブはその後10分ぐらいで終わってしまった。
ヤケクソでそのまま踊っているとメインのEUROMASTERSのライブが始まった。
今まですいていたのに人が鬼のようになだれ込みフロアは一杯に!
流石本場のガバは違うぜ!まけじと踊り狂う俺。
そしてEUROMASTERSが投げた帽子(FORZEというレーベルのものらしい)を偶然キャッチ!!!やったー!!!
その後握手もしてもらい、ポスターを配っていたのでそれも貰ってあつかましくもDJポールにサインもしてもらった。
(ハンマーブロスのレコードで「ヘイ!DJポール!頭が悪いね!」ってサンプリングされているのがある。)そして大満足で帰ったのでした。
以上です。
Here I am!!!!!!!!!!!
KAK-A recordingsのドメイン内に、当日のライブ録音の音源も上がっている。どういうライブが行われたのか、こちらも合わせて聴いて頂ければ当時の空気が伝わると思う。
live_19980202.mp3
Hammer Bros
Hammer Bros
日本のGABBAシーン黎明期から活動を続けていたHammer BrosはGABBER STORMのリキッドルームのライブで解散、一旦活動停止を迎える。しかしみち氏(BIG THE BUDO)がメインとなりGen Production(はだしのゲン中沢啓治氏オフィシャルサイト!)として活動を続け、2006年にHammer Brosベストアルバムの発売、そして復活ライブを行い活動を再開した。
Hammer Brosのベスト盤『AIR RAID YOUR ASS!』
Here I am / Hammer Bros
Hammer Brosの脈絡の無い(ように感じる)サンプリング、コラージュ、凶暴な雰囲気に惹かれ、全日本ファミプロ協会の会誌は攻略本にも関わらずコラージュが増えた。
紙面が凶暴かつ狂気に満ちたものになり、失踪、発狂するメンバーが多数出たためファミプロは解散した。その後私はファミコンをやりすぎた為ファミコンネタオンリーのアルバムを制作してしまうのだが、それはまた別の機会に語りたいと思う。
ビート・ゴーズ・オン
(音楽に関する部分以外はフィクションが含まれています)
posted by DJイオ at 00:00| 第1回〜第25回
2009年12月20日
第2回「YUMIKO / ANIME」
ユミコとの出会い
1998年夏。渋谷東急ハンズへの向かいへと渡りシスコハウス店へと私は向かった。
レコードを購入するためだ。店頭に出ているフライヤー(イベントのチラシ)を軽くチェックし、
店内に入る。クーラーがあって涼しい。その時何かが私の目に入った。
レコードだ。

YUMIKO / ANIMEのレコード(表)
面出しで置かれているそのレコードは、周りの品と比べ一際異彩を放っていた。
「YUMIKO」「ANIME」。そしてこの女のアニメ絵。科学技術館の地図。
これを見て私は確信した。「外国産だ」
今は亡きシスコハウス店は主に外国のレコードを輸入していたからだ。
「YUMIKO」だと思われるこの女のアニメ絵は根拠は無いが日本文化に憧れを持つ外国人が描いたものだろう。
科学技術館の地図も日本語が分からない外国人が「グッド」とか言いながら切り抜き貼り付けたものであろう。
「ANIME」の文字は?わからない。「アニメ」が好きだと言う事か?
周りを見渡し、素早くそのレコードを手に取った。最後の一枚だった。
裏面を見る。

YUMIKO / ANIMEのレコード(裏)
通常こういったレコードに歌詞が記載されている事は少ないのだが、歌モノらしく歌詞と、「YUMIKO」にまつわるらしいいくつかのイラストが描かれている。
左側には「Home」「Videogame」「Car」、右側には「Diary」「Cat」「Boyfriend」
得も言われぬ安いアイテムが並んでいる。「Car」って言われても。
「ANIME」はどうやらアーティスト名らしくイタリアの「TIME」という大手レーベルから出ているものであると判別できた。
今考えると信じられない事だが当時のレコード屋は視聴できないものが多かった。
女性店員にどういったレコードなのか訪ねる。
店員はレコードを一瞥した後冷たくこう言い放った。
「わかりません。」
昼の間は、私は女に銃を突きつけない。
が、この時はコルトを突きつけそうになった。
ぐっと我慢してレコードを購入し、小田急線に乗り一時間かけて本厚木の自宅へと帰る。
海外産ナードハウス
折しも1997年、攻殻機動隊「GHOST IN THE SHELL」のゲーム盤サントラでテクノなコンピレーションが発売され、石野卓球、デリック・メイといった有名なテクノアーティストが参加、日本の「メカ」「アニメ」「オタク」そういったキーワードが世界的に割と有名になった。
「YUMIKO」の歌詞も正にそういったものだった。
英語を解さない諸君の為にここに私の意訳を載せたい。
こんにちは、わたしユミコ
二次元の女よ
私の愛はオタクのもの
私の世界に来て
あなたの番号教えて
あなたはわたしの先生
血液型はO型よ
アメコミじゃないわ
ロリコン ロリコン オッオー
ロリコン ロリコン オッオー
わたしはあなたのマンガ
わたし本当にエッチマンガ
こんにちは、わたしユミコ
二次元の女よ
私の愛はオタクのもの
私の世界に来て
こんにちは、わたしユミコ
二次元の女よ
ブッキョウ楽しい
あなたのアニメスターになるわ
わたしのスクリーントーンを見て
わたしのメカを見て
あなたのGペン感じるわ
※以下繰り返し
我々がイタリア人に抱く、好色、種馬、パスタといった偏見と同様にGペン、仏教、アニメといったオタク以前の安易な日本のイメージが繰り返される。
一体何なんだと思いながら、しかし私はオラワクワクしてきたぞ感を禁じえなかった。
針を落とす。
オリエンタルなメロディに清々しい女性の声。
「ハローマイネームイズユミコ」
「ロリコンロリコン」
言葉に起こすと恥ずかしい以外の何者でもない曲だがそこには真の歌モノアンセム(凄く盛り上がる曲の事)があった。
本物のレコードは針を落とした瞬間に感覚でわかる。
日曜日、日が差す教会へとCarでBoyfriendと共にやってきたYUMIKOが歌い上げる様が私の脳裏に浮かんだ。
この曲は以降10年間私の決め曲になり、度々mixcdにも収録してきた。
日本に何枚入荷されていたのかはわからないが、私以外に日本でこのレコードを持っているDJは現在の所一人しか知らない。
イタリアの日本オタク(かどうかはわからない)が、そよ風の気まぐれで作った爽やかナードハウスが日本に輸入され、ある日本人DJがおもしろがって「ユミコ!」「ロリコン!」と叫びながらプレイし続けたのだ。
10年間、間違っていた
約10年後、2009年、ある日一通のメールが私に届く。
女からか。違った。男だ。
「イオさんは33回転でかけてたけど本当は45回転らしいです」
しばらくYUMIKOと逢ってなかった私は急いでレコード棚を探す。
見つける。そして盤面をよく見る。45RPMとの表記がある。
レコードには2種類の速度がある。
私は10年間、45回転(174bpm)の曲を33回転(129bpm)、つまり約0.7倍の速度でプレイしていたのだ。
以下が本来のbpmのYUMIKOである。
DJには曲を自由にプレイする権利がある。
そこにグルーヴがあり、それがお客にとって、DJにとって気持ちよければどんな速度でも、音でも問題は無いと私は信じている。
これからも遅い回転数でかけ続けるだろう。
諸君はどちらの速度が良い曲だと感じるであろうか?
最後に原曲の歌詞全文を掲載する。
HELLO, MY NAME IS YUMIKO
A TWO-DIMENSIONAL GIRL
MY KIND OF LOVE IS FOR OTAKU
COME INTO MOOK OF MY WORLD
GIVE ME YOUR PHONECARD
YOU'LL BE MY SENSEI
I'M BLOOD TYPE ZERO
NOT AMECOMI
LOLICOM LOLICOM OH OH
LOLICOM LOLICOM OH OH
I AM YOUR MANGA
I'M REALLY H-MANGA
HELLO,MY NAME IS YUMIKO
A TWO-DIMENSIONAL GIRL
MY KIND OF LOVE IS FOR OTAKU
COME INTO OF MY WORLD
HELLO, MY NAME IS YUMIKO
A TWO-DIMENSIONAL GIRL
IF YOU WILL BE MY PLEASURE BUKYOU
I'LL BE YOUR ANIME STAR
LOOK AT MY SCREETONE
LOOK AT MY MECHA
I'D FELL YOUR G-PEN
WATCH HOW I'LL DO IT
LOLICOM LOLICOM OH OH
LOLICOM LOLICOM OH OH
I AM YOUR MANGA
I'M REALLY H-MANGA
HELLO, MY NAME IS YUMIKO
A TWO-DIMENSIONAL GIRL
MY KIND OF LOVE IS FOR OTAKU
COME INTO MOOK OF MY WORLD
HELLO, MY NAME IS YUMIKO
A TWO-DIMENSIONAL GIRL
IF YOU WILL BE MY PLEASURE BUKYOU
I'LL BE YOUR ANIME STAR
ビート・ゴーズ・オン
(この記事は大体事実を元にしたフィクションです。もっと正しい訳をつけてくれる方を募集します)
posted by DJイオ at 00:00| 第1回〜第25回
2009年12月05日
第1回「レオパルドン / 猛犬EP」
火災発生火災発生
1998年、六本木のクラブの地下一階。私は悪友とあてもなく音楽と酒、そして女、ドラッグとかを求めて遊びに来ていた。
フロアではハウスみたいなのが流れ、荒くれ者達が踊っていた。週末も午前二時を過ぎると満員になる。お馴染みの乱痴気騒ぎが始まる。
「あのスケ、いいんじゃないか?」
悪友が俺に囁いた。
「よし、いくか」
その瞬間、前ぶれなくフロアに警報のベルが流れた。
「火災発生火災発生、只今一階女子トイレで火災が発生しました。お客様は落ち着いて、フロアよりご退場下さい。」
当然、フロアはパニックに陥る。ビールを投げ捨てて出ようとする女、どさくさにまぎれて女のパイを揉もうとする男。
私はといえば勿論パニック状態に陥り、裸でワセリンを塗ってツヤツヤした男を押しのけてクラブから脱出ようとしていた。
その時フロアにアナウンスが流れた。
「--嘘です。」
それがレオパルドンとの出会いだった。
Midnight Dancer
曲はシンプルなシカゴハウスのトラックに警報、アナウンス、謎の親父の説教が載ったものだった。
火事で無いと安心した客は喜び、親父の説教に合わせて踊った。
私はつかつかとDJの前に歩み寄り、ブースの中を覗き込んだ。
しかしレコードがグルグルと周っており、文字は読み取れなかった。
「今の盤(トラックの事)は何だ?教えないと俺のコルトが火を吹くぜ。」
こめかみに銃をつきつけられ、坊主頭の気弱そうなDJが答えた。
「レオパルドン / Midnight Dancer」
「もっとこいつの曲はないのか?」
「・・・この店に行ってみな。」
DJから受け取った紙切れには「shop33」と書いてあった。
shop33
翌日、紙切れを頼りに吉祥寺の街へと辿りついた私は、通行人に聞きながらなんとかその場所へと辿りついた。
うらぶれたビルの二階に上がると白を基調とした店内に落ち着いたビートが流れていた。moodymann / oceansだ。
店内にはクラブキッズ向けの服が置かれ、その奥にカウンターがあった。
ショートカットで澄んだ瞳のスケがそこには立っていた。
私は聞いた。
「レオパルドンの曲はありますか?」
昼の間は、私は女に銃を突きつけない。
彼女が指をさした方向には様々なレコード、CDが存在した。
謎のCDR群、そして得体の知れないアナログ(レコードの事)。
探してみると昨日のアナログはなく、猛犬EPというアナログが置いてあった。
可愛いワンちゃんの写真が盤面に写っている。
そこに収録されている4曲を視聴して私は衝撃を受けた。
スパルタンX、ランバダ、フランダースの犬、そしてクラブカルチャーを茶化した演説。
ハウス、テクノのビートに載せて自分の好きなものを好き放題にサンプリングしている。
それらは明らかに不法であり、当時私が買っていたテクノとかとは違う何かが溢れていた。
「本気で聴いていたやつ、嘘に決まってるだろ!気持ち悪いんじゃぁぁ!ヴェェェェ!」
猛犬EP「Spiritual Dancer 〜 TECHNO or DIE!!」の最後の部分まで聞き終えた後、慎重に針を上げ、そのヴァイナル(レコードの事)をレジに持っていき購入した。
「また、くるよ。」
吉祥寺の街は空気が乾き、空が見えていた。梅雨があがったのだ。
これから何かが始まるかもしれない。
しかしその時の私には「それ」が何かが分かっていなかったのだ。
ビート・ゴーズ・オン
(この記事は少し事実を元にしたフィクションです)
posted by DJイオ at 00:00| 第1回〜第25回